AM伝搬実験(JA−ハワイ間6200km)について
0. はじめに
ハワイのホノルル在住のAH7C田中OMとの通信実験が,計画され,<2014年2月22日(土) 17:00(JST)〜 >に行われました。
当方のところでは,17:00過ぎに,SSB信号がS9+30dBで入感してきたため,コールサインを確認すると「AH7C」と判明。
早速,搬送波出力25WのAMでコール。
同時に,JA8KJG,JA6KNQの各局も呼んでいたようで,JA8KJG,当方,JA6KNQの順にレポート交換しました。
ちょうど当方がレポート交換していたのは,17:04ころでRS59QSLである。
17:30過ぎには,同じ県内の筑西市からJA1HU伊藤OMが807A 4W+100mロングワイヤーで,ホノルルからRS57のレポートが帰ってきました。
今回,初めてAMモードでハワイとの交信である。
なお,JA1HU伊藤OMをモデルに,高さ10mのダイポールアンテナ,出力5Wと仮定してシミュレーションした結果,JA-Hawai間のSNR28dBである。
交信時の電離層の状態がどうなっていたか検証してみることにした。
まず始めに,NICTサイトにある「日本中心の短波伝搬曲線集」の2月における東京ーホノルル回線は,P19の図2−22のように通年は以下のような曲線を示しています。
「日本中心の短波伝搬曲線集」を用いた電波伝搬の詳細については,「はじめに,目次」をご覧いただきたく思います。
※「日本中心の短波伝搬曲線集」は,すぐローカルのひたちなか市平磯町にある旧郵政省電波研究所平磯支所では年一度,7月末日ころ,観測・研究施設を一般公開していました。
その際,短波の電波伝搬と太陽の活動に関しての研究資料や電波予報の仕組みについても公開していましたが,近年は太陽観測・研究が主になり短波通信はアマチュア無線の愛好家くらいにニーズが減少したためでしょうか,これらの情報はもう公開していないのかもしれません。(最近は,一般公開があるかどうか不明です)
ただし,太陽の活動状況から,毎年の2月の状況と今年の場合は同じ傾向はあると思いますが果たしてどうか判らない状況ではあります。
そこで,ネット上の情報をもとにDXアトラスを用いてその時の状況を調べてみます。
1. 黒点数
まずは2014年2月22日の黒点数の状況である。
NICTのサイトから以下のようになっていました。
最近10日間の観測値 データ日: 20140225 (UT) cNOAA/SWPC |
||
年月日(UT) | 黒点数 | F10.7 |
2014年02月16日 | 137 | 154 |
2014年02月17日 | 101 | 152 |
2014年02月18日 | 134 | 151 |
2014年02月19日 | 123 | 158 |
2014年02月20日 | 140 | 156 |
2014年02月21日 | 152 | 157 |
2014年02月22日 | 179 | 163 |
2014年02月23日 | 185 | 172 |
2014年02月24日 | 205 | 171 |
2014年02月25日 | 157 | 174 |
2. グレーライン(GrayーLine)
以下は,ハワイを中心にした17:00時点のグレーラインである。
早くも日本の北海道にかかり始まった。
3. MUF(3000):伝搬距離3000kmのMUF
3000km伝搬距離となるMUFは,各色の等高線で示すように,ほぼ一定の領域となっている。
MUFは,@→Fの方向に向かって周波数が高くなるような傾きがある。
各領域でのMUFは,以下の通りである。
なお,最適通信周波数FOTは,MUF×0.85で求めることができます。
4. F2層の臨界周波数f0[MHz]
臨界周波数f0は,@からDの方向に向かって周波数が高くなるような傾きがある。
5. F2層の高さ
F2層の高さは,@(308km)→G(238km)の方向に下がる傾向の傾きがある。
6. 結論
画像の時刻は2014年2月22日17:04の当方がホノルルのAH7Cとレポート交換した時刻の状況である。
画像の枚数がかなり大量になってしまうためリアルタイム的な変化の画像は省略した。
パソコン上でDXアトラスの時刻を順次進めて行くと,グレーラインに沿ってJA8(北海道方面)→JA1(本州中央部)→JA6(九州方面)の方向に進行していったことが電離層の状況から把握できる。
電離層の高さ(F2層)は,5._F2層の高さで示すようにそれぞれの領域で傾斜をもって異なる関係からそれぞれの地点から目的地であるホノルルまで跳躍距離を求まると,最適なタイミングを見つけることができるかもしれません。
JA−ホノルル間の距離は6200kmですので,3000kmの跳躍距離では電離層で2回反射すると考えれば,MUFが10.5MHzとすと
最適通信周波数 FOT = MUF×0.85 =10.5×0.85 =8.9[MHz]ですのでそれ以下の周波数で通信可能になります。
7.2MHzですと,MUFの約70%でした。
アンテナからの打ちあげ角にも寄りますが,皆さん10m高のダイポールアンテナで同一条件と仮定すると,春分に近づいている現在では,最もグレーラインに突入するのが早いJA8(北海道方面)→JA1(関東)→JA6(九州方面)の順にコンディションが開けて行くことが把握できると思います。
ところで,LUFの影響ですが,この場合は,E層による吸収減衰による影響が大ですので,送信出力が大きくなるとLUFが低い周波数へ移行して行きますので大電力な局ほどエリア外からも通信可能になります。
次回の通信実験が企画されたとき,どのような好条件で通信できるか予測の参考になれば幸いです。