JR1KQU加藤OMの連載記事「7MHz AM通信へのお誘い」で2014 CQ Ham Radio 9月号に掲載されているJJ7GNQ(浅野龍雄氏)製作のGNQスペシャル(G5RV改/ビックサイズバージョン)について口コミで多くの方々が試作されているようです。そこですでに公開されている基本G5RVアンテナ(製品化されているMFJ-1778を参考)と動作状態について比較検討しましたのでここに紹介します。
G5RV/JJ7GNQスペシャルアンテナの製作
G5RVアンテナは、アンテナハンドブック(CQ出版)やアマチュア無線ハンドブック(JARL監修)、ハムジャーナル誌(CQ出版)の45号/1986等で紹介されて、近年多くの方が使用しています。
著者は、このアンテナについて関心を持ち、ローバンドで充実した通信を楽しめるように多くの実験・改良のすえ、現在のかたちになり、満足する結果が得られましたので本誌をお借りして紹介することにしました。
[1]G5RVダイポールの基本
はじめに、G5RVアンテナの基本について確認ましょう。
このアンテナは設計したルイ・バーニー(Louis Varney)のコールサインにちなんで命名されています。 標準的なG5RVアンテナは、20メートル(14.150 MHz)バンドで、3つの半波長(二分の三波長)102フィート(30.6m)長のダイポールアンテナとして動作し、チューナーを使用することで、他のバンドに使用することができるものです。
バーニーのオリジナル設計では、水平部の長さが102.57フィート(30.771m)となるように計算しますが、チューナーを使用する予定でしたので、それをさらに102フィート(30.6m)にすることを選んだとのことです。
※ 14.15MHzにおける波長λ=300/14.15=21.2014[m] 3λ/2=31.802[m] 水平部のラジエータ・ワイヤーの速度係数VF値は、どのような値を仮定して計算したのか求めてみました。 VF=30.771/31.802=0.967
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もともとは、34フィート(10.2m)の500オームの自作オープン・フィーダーによるマッチング部にチューナーを配置してマルチバンドで使用したようですが、その後75オーム同軸または並列導体フィードラインを通して供給したようです。
※ 14.15MHzにおけるλ/2=10.6[m], 自由空間に比べてフィーダー内で速度が落ちるため、速度係数VF(Velocity Factor)は、VF<1.0となり、波長が短くなることから短縮率と呼ばれることもあります。 また、オープン・ワイヤー・ラダー・ラインでは、一般的にVF=0.94〜0.99、ツイン・リード・ラインでは、VF=0.8〜0.89。 海外で発売されている450オーム・ラダー・フィーダーの場合は、絶縁体をラダー状に抜いていますのでVF=0.9〜0.93程度と伝送路の絶縁材質の誘電率や充填状態によって異なるようです。 @ オープン・フィーダーで、VF=0.962と仮定すると λ/2フィーダー長=(λ/2)×VF =10.6×0.962 ≒10.2[m] A 450オーム ラダー・フィーダーで、VF=0.92と仮定すると λ/2フィーダー長=(λ/2)×VF =10.6×0.92 ≒9.75[m] |
34フィート(10.2m)のオープンワイヤラインは20メートルバンド上の半波長、半波給電線の終端における半波長であり、フィードラインのインピーダンスに関係なくアンテナインピーダンスを繰り返し表示されます。
このことは、ラダーラインの一部が他のバンドにアンテナをマッチングさせるのに役立ちます。
この長さは、使用するフィーダーによってVF=0.8〜0.99くらいの幅がありますので、それにより長さが異なります。このためフィーダーの長さの再現性としては、同じ条件のフィーダーを使用しない限り同じ長さになりません。
しかし、長さを調整することにより、チューナーのマッチング範囲に入るようにすることができます。 このためため、使用するバンドによっては多少長さで調整する必要が出てきます。
バーニーは、同軸ケーブルでオープンワイヤを結合する場合に、同軸ケーブルの8〜10ターンで作られたチョークを使用するように勧めています。
彼が言うように、2:1以上のSWRとなる20メートルバンド以外においてバランの発熱と焼損の恐れがあるので、バランを使用しないよう助言していました。
実際にシミュレーションするとSWRは20メートルバンド以外の帯域で適度に高いかさらに高くなります。
バーニーは、高SWRに起因するフィードライン損失を低減すべく、可能な限り同軸ケーブル短くし、最小損失の同軸ケーブルを使用することを勧めています。
バーニーが設計した当時にそれがあったとしても、この勧告は、今日においても非常に重要なことです。
今日使われているG5RVアンテナの多くは、300オームや450オーム・ラダー・ライン、600オームのオープンワイヤーによるラダー・ラインが使われ、さらにバーニーの提案に反してラダーラインと同軸の間にバランを使用しています。
今日販売されているG5RVアンテナには、スタンダード、ハーフサイズ、ダブルサイズなどいくつかのバリエーションがあります。 同軸との接続部には、バランが挿入されていたり様々ですが、
彼らがオリジナルデザインにより性能を向上させることができると信じているのです。
しかしながら、G5RVアンテナをマルチバンドで使用する場合は、必ずチューナーが必要となることは変わりません。
[2]JJ7GNQスペシャル
G5RVのオリジナルは、14.15MHzで3/2波長動作するダイポールアンテナで、設計周波数以外において、チューナーを使用することで複数のバンドで使用可能となるアンテナです。
著者(JJ7GNQ)は、G5RVアンテナの特徴であるチューナーを使用することでマルチバンドで自由に使用できるアンテナを目標に、試作を繰り返し、最終的には、AM局が多く集まる3.757MHzで基本動作し、チューナーを活用することでマルチバンド運用が可能となるアンテナを完成させました。
水平部エレメントは、3.757MHzの半波長が4つ同相で電流が分布します。
エレメントの太さは約3mm、長さは、実験の結果として、
(1波長×0.905=72.4[m])×2 = 144.8[m]
としました。
ラダー・フィーダーは、実験の結果、多くのバンドでチューナーのマッチング範囲に収まる長さを決定しました。
G5RVのオリジナルのラダー・フィーダー長の考え方と少し異なりますが、基本動作周波数の
1/2波長ではなく1/4波長+αとなっています。
これは、水平部の電流分布が1/2波長が4つ同相給電されるような位相器の役割も担っています。
以下、追試・製作の参考になるよう、アンテナの構造、ならびにMMANA/MMANA-GALによるシミュレーション結果を紹介します。
また、G5RVに限らないと思いますが、成功のポイントとして、支柱を金属パイプ等で立てた場合に、ラダー・フィーダーは、マッチングセクションとして動作しますので,金属体から相当な距離を離す工夫をして架設することが必要です。
輻射パターンは、複雑になっておりますが、国内の交信においては、1/2波長ダイポールに比べて数dB以上強力かつ安定に交信できた実績から考慮すると、かなり有能なアンテナとして期待できます。
JJ7GNQスペシャルの構造図 |
MMANA/MMANA−GAL定義ファイル
定義ファイルの内容
G5RV(GNQ_version1.1) 75m,40m,20m,15m,10m * 3.757 *** ワイヤ *** 5 0.0, -72.4, 22.3, 0.0, -0.075, 22.3, 0.0015, -1 0.0, 72.4, 22.3, 0.0, 0.075, 22.3, 0.0015, -1 0.0, -0.075, 22.3, 0.0, -0.075, 0.0, 0.0015, -1 0.0, 0.075, 22.3, 0.0, 0.075, 0.0, 0.0015, -1 0.0, -0.075, 0.0, 0.0, 0.075, 0.0, 0.0015, -1 *** 給電点 *** 1, 1 w5c, 0.0, 1.0 *** 集中定数 *** 0, 1 *** 自動分割 *** 400, 40, 2.0, 1 *** 計算環境 *** 2, 0.5, 0, 75.0, 120, 60, 0
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MMANAのアンテナ定義
3.757MHzにおけるSWR特性(給電点インピーダンスを75オームとしている)
3.757MHzにおける指向性パターン(垂直偏波成分が多くエレメント方向にやや強く輻射している)
3.757MHzにおける水平偏波成分(4方向に輻射ローブがある)
3.757MHzにおける垂直偏波成分(エレメント方向に2つの輻射ローブがある)
7.195MHzにおける垂直偏波成分